夫は都内にある大手金融機関の本店へ新幹線通勤している。大学で知り合い7年の交際を経て、結婚4年目になる。夫は一幼少の頃父親を亡くしてから、経済的に苦労したというコンプレックスを抱えているためか、出世欲が強く何よりも仕事優先。

 そのため子供もいらないと言う。妻は、そんな夫がけして嫌ではなく、夫を支えると決めていた。妻も結婚を機に、大手企業のキャリアを捨てて、都内から夫の母親が1人で暮らす栃木の実家まで車で3分のマンションへ越してきた。
昨年12月中旬、夫が「しばらく1人になりたい」と突然家を出た。1年前も同じようなことがあり3日目に帰宅したので、そのうち帰って来ると深くは考えなかった。しかし、年明けの1月、一方的に離婚すると連絡があった。弁護士に相談すると、「女の人がいるのでは」との指摘をうけ、事の重大さに気づいた。

 調査開始。まず、本人の生活拠点を特定することが先決。しかし、勤務先のビルは警備体制が厳重で近くでは張り込めない。探偵は目抜き通りにある有料駐車場へ車を止め、双眼鏡で退社する夫を見張る。幸い社員の通用口は通りに面した1カ所であることと、夫の風貌は大学時代柔道部の重量級であったことから、体格が異様に目立つ。マスクをしていても容易に判別ができる。午後10時過ぎ、ようやく夫が出て来た。電車で40分程の駅に降り立ち、ウイークリーマンションの3階の部屋を開錠して入った。夫の部屋のドアの開閉を視認できるのは、向かい側の小さな公園の片隅しかない。そこで、探偵は、目立たぬようドアを注視する。女性の出入りがないとも限らない。張り込みが9時間を経過した翌日の土曜日、夫が施錠し「部屋を出た。最寄り駅とは反対方面に向かう。
 車が通行できない路地を抜けていく。徒歩尾行の探偵とその後ろから、バイクを押しながら尾行する探偵が慎重に後をつける。行きついた先は、3分ほどの場所にあるカーシェアリングの駐車場。車が出た。バイクはできるだけ姿をさらさぬよう尾行し走ること5分、コンビニの駐車場へ。止める。夫は降車しない。すると、コンビニから出て来た女性が車に乗り込んだ。マスクで顔の確認はできないが、その服装から20歳前後とおぼしき小柄な女性だった。その後、隣県にあるアウトレットに行く。ランチタイムのマスクを外したところを狙う。まだ10代ともいえる女性の顔があった。午後6時、手をつなぎ2人は夫のマンションに消えた。訴訟に備えて、部屋を出る映像と、女性の素性を割り出さなければならない。2人が入室してから18時間が経過した翌昼過ぎ、2人は出て昨日のコンビニへ。女性を尾行すると近くの一軒家に入った。

後日の調査で、その女性は大学3年生であることが判明。妻は女子大生と交際していたことに、茫然自失となった…。

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