何げなく見てしまった妻の携帯。消去し忘れたとおぼしき、深い関係を示した一通のメール。それは生まれて10カ月の息子を依頼人である夫が面倒をみていた日と合致する。かねて、夫は、育児にいそしむ妻を思い「たまには友達と気晴らしにでも行ったら…」と勧めていた。怖いけど真実が知りたい。なにかの間違いであると思いたい。夫は苦悩の表情で頭を抱える。

 結果が出るまで、これまで通りの円満な夫婦を演じ切ること。これが調査成功の鍵となることを説明する。妻の生理の周期を考慮して、前回と同様、妻に気晴らしを勧めた。その日が確定し万全の調査体制で臨む。

 調査当日、妻は車で夫に告げたレストラン方面へと向かう。5分ほど走ったところで急に脇道に入りおもむろに携帯を取り出す。間もなく、自宅のマンション方面へ迂回(うかい)するように細い道を走る。尾行する探偵は経験上判断した。それは、マンションのベランダから夫が見ていることを想定しての行動であると。妻の車は、郊外のシヨッピングセンターの地下駐車場へ。妻は降りない。すると、妻の車の隣に一台のワゴン車が…。

–後編に続く-

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