「男性に総額150万円を貸した・・・」という栃木県南部に住む57歳の主婦。借用書もない。唯一の証拠は、男性に振り込んだ銀行口座番号と今はつながらない携帯電話番号。相手の住まいも分からない。行政機関へ相談しても聞いてもらえず。

揚げ句「男女の関係があった場合だと・・・」と、胸を引き裂かれる侮蔑の言葉を浴びせられた、と涙ぐむ 

依頼人は、公務員として約30年間勤めてきたが、3年前に不慮の事故で息子を亡くし、ショックのあまり退職。それからは、気を紛らわせるために、友達に誘われた動物保護関係のボランティアに参加していた。そこでボランティアに来る、亡くした息子と同世代の男性と知り合った。動物に接する優しいまなざしと、気さくに話しかけてくれることにうれしさが募っていく。

それが楽しみとなり、息子の死の痛みが少しずつ和らいでいくようだった。将来の夢は飲食店をやること、と熱く語ってくれた男性は、父親を知らない。2歳のとき離婚した母に育てられたけど、その母も2年前にがんで他界した。犬や猫が好きだったけど、とても飼える環境にはなかったから、仕事の合間にここに通うになった。

現在は自動車工場で期間工員として働いている。依頼人は、男性の不幸な生い立ちを聴いて涙にくれたという。そして、開業資金を融資すると申し出た。その時の喜んだ顔が、嘘だとは信じられないと、いまだに心の片隅で信じている。

そんな時、わらにもすがる思いである某探偵会社に頼んだが、ずさんな報告書だけで、何も分からずじまいだったという。不満も言えずに、泣き寝入りするしかないと諦めかけていた。 そんなとき、以前から親しくしている会社の女性経営者に打ち明け、GKを紹介されたという。この女性経営者は、金融機関主催の講演会に参加した時、「探偵の有効活用について」というGK探偵事務所の講演を聞いていた。依頼人の望みは、お金よりその男性の真実を知ること。

調査開始。

2日後、その男性らしき人物が判明した。
両親が離婚したことは本当だったが、母親は死んではいない。再婚し、夫とその間にできた子供たちと生活している。本人は、早朝の宅配便の荷物仕分けのバイトに通い、10歳年上の女性と同棲、女性の小学生の娘と、犬・猫と共に借家に暮らしていた。

 

後日、そのすべての映像を 依頼人に見てもらう。依頼人は、その映像を食い入るよう見つめた。暴かれた嘘。しかし、怒るどころか目が潤んでいた。慎ましい生活ぶりと、子供や犬に向けるまなざしは、私と接していた時と変わらない。

だまそうとしたわけじゃない事情があったに違いない、連絡が来ることを信じますと事務所を後にした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です