5月下旬、十数年取引のある横浜に本社のある創業130年、社員数400人の会社の経営者からの相談。末娘が今年3月末、大学入学に伴い都内の高層賃貸マンションへ越した。すると4月半ばに、封書が投函されていた。それも、郵便ではなく直接投函されたもの。内容は、【[夫の名前と年齢・女性の名前が明記]。夫と7年間不倫関係にある。証拠はそろっている。月に2~5回の密会を持ち、今でも継続している。これまで数百万円の金品を受け取っている。密会の詳細を示すもの(旅行先、宿泊ホテルの名、他の密会場所等、詳細が時系列で20枚にわたり具体的に書かれている)。今後、メール、電話等の連絡をしたり、面会(1対1以外でも)が一度でもあった場合、これまでの経緯に写真(乳房写真を含む)を添付して、○○県○○市(番地まで記載)の実家に報告する。さらに、過去7年間にさかのぼり、精神的苦痛に対し慰謝料の請求をする。○○妻】というもの。つまり、娘の前に居住していた女性に宛てられたもの。娘が不倫関係にあった女性と勘違いされて何かされたらと恐怖があり、その妻に別人であることを伝えたいという依頼だった。

 手掛かりは、夫と女性の氏名、詳細につづられた浮気の行動経過しかない。もしかしたら、妻の名前をかたっている別人かも知れない…。難しい調査になった。GKは、二十数年前のテレビ番組「あなたに逢いたい」で認知された探偵社であり、そのプライドにかけて解決しなければならない。プライバシーに踏み込まなくてはならないため、調査手法も慎重に慎重を期さなければならない。当社の顧問である警視庁の元警視正、弁護士など協力を仰ぎ、ようやくマンションの管理組合の投函された日の防犯カメラの映像も確認することができたのは調査開始から2カ月後だった。その間にも同じ書面が再び投函された。夫という人物は、ある機械の開発者で特許を持つ資産数十億の企業家であることが判明した。

 自宅以外に都内に他人名義(名義借り)で3カ所のマンションを所有、愛人を3人囲っていた。封書を投函したとされる妻は娘たちとロサンゼルスに5年住んでいて、両親の墓参りのためにお盆にしか日本に帰省しないことも分かった。投函したのは妻ではないということだ。マンションの防犯カメラの映像と、撮影した愛人2人の顔写真を比較する。すると、投函したのは愛人の1人で40代半ばの最も交際が長い、クラブのママであることが判明。若い愛人への寵愛(ちょうあい)が深まったことの不安・嫉妬から、妻の名前を語って書面を投函したのだった。犯人である愛人は羞恥心からか、まともに顔をあげることはなかったものの、このたびの騒動について謝罪した。

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