「夫の素行調査をしてほしい」。ただそれだけ書かれた一通のメール。わずか1行のメールだからこそ相談者の悩みの重さが伝わってきた。返信後、電話がかかってきたが、相談者はおえつし言葉にならなかった。時間をかけ、話を聴くまでに1時間を要した。しきりに「私が悪いんです…」と言っていたことが心に引っかかった。数日後、相談に来た。「夫から突然、離婚してほしいと言われた」と。

 相談者は30歳の妻。北陸出身で夫との間に6歳になる娘がいる。二人とも漁業が中心の町で生まれ育った。高校の同級生で実家も同じ組内、家族同士でのつきあいも長かった。幼なじみで仲も良かったが、異性として意識したことはなかった。当時、夫は妻の高校時代の親友と交際し、成人式を終えたら結婚することになっていた。妻は夫に対して異性として意識していなかったが、親友と結婚することになったあたりから、嫉妬心が湧きあがり親友に取られてしまうというようなゆがんだ気持ちが増幅していった。心の隙間を埋めるため、他の男性と交際したが、夫への気持ちが強くなっていく。結婚式の日取りも決まり、親友の幸福な姿を目にするたびに表面的な笑顔とは真逆の嫉妬心が渦巻いていった。結婚式を2カ月後に控えたある日、夫と二人だけになる機会があった。夫の前で無性に涙が出た。自分から関係を求めてしまった。その関係は兄弟愛と男女愛を織り交ぜたような強い愛に変わった。しかし、狭い町で許されるはずのない愛。そして、駆け落ちした。「私が悪いんです。罰が当たったんです」と何度も繰り返した。妻は自責の念にとらわれながらつらい胸の内を語った。

 夫は人当たりも良く真面目で、見た目も良く、都内にある大手アパレルメーカーの正社員として働いていた。1年前、北関東統括責任者として宇都宮市内に越してきた。3カ月ほど前から、出張等を理由に次第に朝帰りが多くなっていく。夫は30人のスタッフを管理する立場にあり、帰宅はいつも午前0時ぐらいだった。妻は朝帰りをする日は決まって夫の休日前であることに少しずつ違和感を覚えていった。2カ月前からシフト表を家に持ち帰らなくなったことも、心に引っかかっていた。そして先日、「離婚ほしい」と、何の前触れもなく唐突に言われたという。親とも断絶、故郷を捨てた愛という二人の絆が強ければ強いほどその落胆は大きかった。「私に悪いところがあれば直すから…そんなこと言わないで」と追いすがるしかなかった。

 アスポ探偵シリーズの熱心な愛読者であった妻は、「他人事だと思っていたまさか自分が」、と悲観にくれ涙を流した。真実と向き合いたいと調査をすることに。夫の偽りが次々と暴かれていく。

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