弁護士から紹介されたとGKを訪れた30代前半の夫。

両親を伴ってきた。
夫は栃木県内有数の一流企業のエンジニア。栃木県北の大農家の二男。

品の良い身なりと穏やかな所作は、育ちの良さを映している。
しかし、視線の落ち着きのなさや声の小ささ、表情の暗さに、相当精神的に疲弊している様子が見て取れる。

結局、相談内容を説明しはじめたのは父親だった。

それは、嫁の不審な行動についてだった。
息子には30歳になる妻と、その間に5歳になる男の子がいる。

子どもができたときに、息子夫婦のためにと農地の一 部を転用して家を建て与えた。
二人の出会いは、息子の前勤務地である研究施設だった。

嫁は、社員食堂のスタッフとして勤務していた。
そこで、数年に一度開催される関係会社を含めた運動会の運営委員同士になったのが出会いだった。

それから交際が始まり同棲(どうせい)をするようになった。
息子は、真面目で穏やかであまり目立たないが、嫁のほうは見た目も派手で活動的で
気の強さがにじみ出ている、と父親は説明を続ける。

それから2年後、栃木の工場への転勤を機に籍を入れた。
嫁は、とある県の児童養護施設で育った。
両親も兄弟もいない。

夫の両親は、その生い立ちに負けず明るく生きる姿に心を打たれ、本当の娘だという思いで
できる限りのことはしようと心に決めたという。

翌年男の子が誕生し、平穏な生活が続いた。
子どもが初めての誕生日を迎えたころ、「将来は介護福祉士になりたいので、
ホームヘルパーの資格を取りたい」と打ち明けられた。

両親は自分たちの老後を考えての選択と喜び、専門学校の学費を出し、幼い孫の面倒もみた。
通学のため車まで買い与え、最大限の応援をした。

今では、それが幸せの階段を踏み外す要因になったと、その後悔は深い…。

嫁がまさかすぐ働きたいと言い出すとは思ってもいなかった。
両親の援助もあり十分生活はできる。せめて子どもが中学にあがるまではとの説得もむなしく、
嫁の熱意にほだされ、夜勤のない介護施設であれば働いていいと折れた。

それからしばらくは、何の問題もなく平穏な生活が続いた。
しかし、半年を過ぎたころから同僚と食事、勉強会…というような理由で帰宅が深夜になることも増え、
揚げ句の果てには、家族に無断で夜勤のある系列施設に転勤していた。

そして、寝室も別になり、あからさまに夫の肌を忌避 (きひ)するようになっていく。
そんな状態から半年が過突然離婚したいと言い出してきた。
この変わりようは?

両親は、裏切られ深く傷ついた。
真実は何か?

家族の愛情を置き去りにし、子どもを放置するひとりの「女」の姿が浮き彫りになっていく…。

※ 本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。

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