【夫の肌を忌避するようになった妻の浮気を疑いはじめた。妻は医師であり、学会のため出張も多い。
宇都宮で学会がある前日、夫は妻のポストンバッグをのぞいてしまった。そこには、派手な下着が隠されていた。
その学会には、夫が浮気相手とにらんでいる大学教授も出席する】(前回あらすじ)

閉会2時間前に妻は会場を後にした。
妻は、タクシーを拾い、駅に近いホテルで降りた。
妻がフロントでチェックインの手続きをする後ろに並ぶ。
かろうじて、5〇〇、5階の部屋であることだけは聴き取ったが部屋番号まではわからない。
エレベーター前に待機する探偵に無線のボタンを5回(ツッツッツッツッツッ)合図する。5階という意味だ。

フロントに並んだ探偵は、そこままフロントで会話を持ちかける。
エレベーターに乗り込む探偵への、不審な目をそらすためだ。
探偵は5階に先回りして妻が宿泊する部屋を確認した。
内偵の結果、妻の宿泊する部屋はダブルの広い部屋だった。
5階にいる探偵にはすぐさま、ロビーにいる探偵に伝え、撮影可能な部屋が宿泊可能か確認させる。
運よく妻の向かい側の部屋の予約が取れた。

ここに、妻の相手がくるという先入観は禁物だ。
しかし、ここに来る可能性は極めて高い。
泊まりの証拠だけでなく、二人で会っているときの表情や雰囲気が伝わるような映像も要求している。
それは、離婚が目的ではないからだ。
万全の態勢で臨む。

約2時間後、つややかなワンピース姿に変身した妻がホテルから出てきた。
妻は、1時間ほどゆったりと駅ビル内を歩く。
すると、妻が携帯を手にしながら、これまでの歩調とは打って変るような速さで、駅出口方向へ闊歩(かっぽ)し始めた。
そこで、すでに男性がのっているタクシーに乗り込み、郊外のレストランへ向かった。
そこには、やはり夫がにらんだ大学教授の姿があった。

満面の笑みでワインを傾ける妻、人目もはばからずテーブルの上で手を取り合う二人。
数時間後、二人はもつれ合うように5〇〇号室へと消えた。
もちろん、向かいの部屋からその様子を撮影したことは言うまでもない。
仕事とはいえ、夫の気持ちを思い、寂寥感(せきりょうかん)に見舞われた探偵たちの姿がそこにはあった。

※ 本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。写真はイメージです。文章とは関係ありません。

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