
依頼人は48歳の妻。
不倫相手からストーカー行為を受けているとの相談。
証拠というものを持参してきた。
紫色に変色した二の腕の写真や会うことを強制強要しているメール。
依頼人は総合職として大手金融機関で管理職として働いている。
実は、これが2度目の依頼で、2年前、夫の浮気調査をしたことがある。
結果は、勤務する会社の契約社員と関係を持っていた。
しかし、結果を報告してもなぜか不思議と落胆はしなかった。
それは、家庭を壊すような浮気でなければよかったからだ。
嫉妬しているわけでもなく、仕事も順調で経済的にも恵まれている。
一人息子は昨年、国立の一流大学に入学できた。
好きな仕事にまい進してきた人生。その努力は実を結び、責任のある立場にも抜てきされた。
夫婦は既に家族であり、男と女としての情熱は家族の歴史と共に消滅していると語る
妻の冷めた言葉が印象深い。
ただ、言いようのないむなしさに包まれたと振り返る。
息子の教育と仕事だけにアクセルを踏み続けてきた。
そして、いつしか「女性」というものを置き去りにしてきたと。
夫も浮気していたし、私だってというような気持ちがあったと、
どこかで自分の不倫を肯定している妻がいた。
ストーカーに変貌した彼は 中学の同級生だった。
半年に1回飲み会を10数年続けている仲間の一人だった。
男性として意識する相手ではなかったが、2年前の夫の浮気を知り、
その事実を打ち明けた時、真剣なまなざしで受け止めてくれた。
それから2人だけで会うようになり、深い関係になるには時間はかからなかった。
ただ、初めての刺激的な不倫のはずなのに、不思議なほどさめていたという。
後悔もしなかった半面、夢中になることもなかった。
頭を占めているのは、仕事の業績をあげることだけだった。
しかし、彼はそうではなかった。
公務員で残業も多くはない。
最初は、月に3回程度の逢瀬だったが、それが次第に2回になり1回になっていく。
時には仕事のためドタキャンもあった。
彼は怒ることもなく、「仕事優先でいいんだよ」と理解してくれたし、
自分と同じぐらいの感覚だと勝手に思い込んでいた。
しかし、彼は次第に変豹していく。
約束の時間以外にメールしてき たり、帰宅途中によく立ち寄るコンビニで、
偶然を装い姿を現し甘えた声で関係を迫ってきたり…。
そんな彼に幻滅し、関係を絶ちたいと告げる と、ついに男は豹変した。
それまでの優しいまなざしは狂気に満ちた眼に変わり、
優しい語り口は怒気を含んだ脅しに変わった。
ここからさらにすさまじいストーカー行為がはじまっていく…。
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