
「不満はない。物足りなさを感じていると、愛するわが子を残してまでも家を出た妻。
妻の背後にいたのは、出会い系サイトで知り合ったという男。
以前、ファミレスで同席したことがあるという妻の同僚の協力を得て、妻の足取りを追う。」
同僚によると、その男は眼鏡をかけた小太りの頭の薄い、俗語でいえば「きもい」男だったという。
鮮明に記憶されていることといえば、男ではなく、男の車だったと振り返る。
それは、ファミレスの駐車場で別れるとき、車体にアニメキャラクターがペイントされている
「三重ナンバー」の車だったということ。
これは、痛車とか萌(もえ) 車とかと呼ばれているもので、アニメ・ゲームなどに関連する
キャラクターのステッカーを貼りつけたり、ペイントしている車である。
同僚も、まさかこんな男と交際するとは思わなかったと首を振る。
妻は、次第に同僚の忠告を無視して二人で会うようになった。
男の情報としては、自動車メーカーに勤務する38歳の独身で、半年前に転勤で栃木に来たということ。
自動車メーカー勤務が本当であれば、三重といえば県内で連想するのはまず「H社」しかない。
H社製車を調達して広大な駐車場の中を探し回る。
通勤時間帯を含め3日間探し回ったがその車は見つからない。
メーカー勤務というのが偽りなのか。車を2台所有しているのか。捜索は難航した。
そして、複数ある関連会社まで捜索範囲を広げ、ついにそれとおぼしき車を見つけた。
午後6時すぎ、男が出てきた。車の映像と、
顔の映像をすぐさま同僚に送信すると間違いないとのこと。
慎重に尾行する。走ること15分、真新しいアパートに着く。
車が縦に2台止められるようになっており、シートカバーがかかっている車の前に駐車した。
部屋を突きとめ、シートカバーの中を確認する。
妻の車だった。
万が一見つかることを恐れ、隠すようにしていたのだろう。
そうこうしているうちに、着替えた男が女と連れ立ってアパートの階段を降りてきた。
依頼人から預かっている写真とはまったく違う。
一瞬別人かと錯覚をするほど、妻の姿は変貌を遂げていた。
黒髪ではなくピンクのメッシュ。
ニーハイと呼ばれるハイソックスにミニスカート。
男の影響なのか。
地味で堅実な生活をしてきた妻の反動による変身願望なのか。
その後 二人はレンタルビデオ店に行った。
誰が見ても異色の二人だ。
むしろ、好奇の目にさらされていることを楽しんでいるようにも見える。
後日報告。
その映像に両親は言葉も出なかった…。
それから1ヵ月後、依頼を受けボディーガードとして、依頼人とともに妻を連れ戻した。
しかし妻は再び家を出た・・・。
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