夫は背中を屈めて2階へ向かう階段に足をのせた。
ノックもせずにドアノブを回し部屋に入る。

ベランダ側に回るが、厚手のカーテンが閉め切られていて中の様子はうかがえない。
20分ほどたったろうか、ドアが開いた。
階段を駆け下り車へ急ぐ。
ほぼ後を追うように女性が出て、後部座席に身を沈めた。

依頼人の妻は小柄で、ショートカットだったが、この女性は妻とは対照的で、髪が長く、
170センチ近くはあるだろうか、スタイルの良さが際立ち、年齢も30代後半と思われた。

車は、東北自動車道へ。
パーキングに立ち寄り、女性は後部座席から助手席へと身を移す。

2人の満面の笑みばかりが飛び込んでくる。
そして、行き着いた先は県北の温泉地。名の知れた大きなホテルだった。

間違いなくここに宿泊する!と確信を得た探偵は、先回りし、急ぎフロントへ向かう。
駐車場に掲示されていた「日帰り入浴可」の文字を見逃さなかった。

とりあえず日帰り入浴の手続きを済ませれば、チェックインした2人を追いやすくなるからだ。
入浴者を装い仲居に先導された2人を尾行する。
仲居との会話に耳をそばだて、夕食は6時に2階のレストランでという会話をつかむ。

尾行するだけが探偵ではない。
プロはどんな些細(ささい)なことにも神経を使い、撮影のプランを構築しなくてはならないのだ。
そして2人の宿泊する部屋を突き止めた。

妻に経過を報告する。電話口の妻は、悪夢が現実となった事実が受け入れられない。
しきりにどんな女性なのかだけをしつこく聴いてくる。
浮気の事実よりも、自分より若いということだけに嫉妬が集中しているように思える。

なだめ、落ち着かせ、 翌日自宅に戻るまで調査を続行することに。
探偵3名がホテルへ宿泊し、部屋の出入り、夕食の様子、貸切露天風呂への出入りなどの証拠映像を押さえた。

どうしても映像が見たいと妻は、夫が帰宅する前に家を空け、われわれの事務所付近で待機していた。
すぐさま編集前の映像を見せた。
憤慨するかと思いきや、プライドなのだろう、妻はいたって平静を装っていた。
映像を確認した妻は、「この女、知ってます・・・」と言ったきり口をつぐんだ。
その女性と夫婦の関係は、われわれの想像の域を超えたものだった・・・。

「夢、胸騒ぎ、予感 ・・・。それは、不安を映し出す鏡なのかもしれません。
不安を取り除くこと、それは、勇気を持って真実をつかむことなのです」と駒木代表取締役。

※本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。写真はイメージです。文章とは関係ありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です