「娘は元気で暮らしているのだろうか?」と60歳を過ぎた男性が、1枚の写真を大切に握りしめて相談に訪れた。娘さんは、父親に抱かれ満面の笑みを浮かべている。
ギャンブル、女性問題など、複雑な事情から、当時4歳の娘を連れて妻が家を出てしまったのだという。その後、男性は紆余曲折の人生を歩き、現在は独り暮らし。ある病を抱えて入退院を数回繰り返すうちに、「娘が幸せかどうか知りたい…」という感情が、以前とは比較にならないほどこみ上げてきたと切実に訴える。
調査を進めると埼玉にいることが判明したが、その生活ぶりは、必ずしも幸せとは言えない実状だった。
肉親捜しは地味な仕事だが、発見に至った時の喜びは、何ものにも代えがたいものがある。しかし、その一方で不幸な結果の場合、真実を報告することが探偵の使命ということを、実につらく感じる時でもある。