典型的な亭主関白の夫と6歳の男児を持つ栃木県西部の30代の専業主婦。ある日、母親とともに相談に来た。ここ半年、決まって月、水、金の夫の帰りが遅い。女性がいるのでないか、夫が不倫をしているのではないかという不安にさいなまれているという。
調査結果はすぐ判明した。会社を定時に退社すると自宅とは反対方向に車で30分。着いたのは5階建てのある会社のビル。車を降りると、ワゴン車から降りてきた数人の男女とビルの中へ。そこで調査員が見たものは…。
作業着と作業帽を目深にかぶり、清掃業務に従事している夫の姿だった。リストラにはならなかったものの、不本意な配置転換と残業もない部署への異動を受けたことも判明した。後日、依頼人に報告。ずっと涙が止まらない。夫は、妻は家を守り、子供を育てるものという考えの持ち主。「私たちに心配をかけたくなかったのだと思います」妻はそう話してくれた。
我々探偵の仕事は真実の姿をつかむこと。それによってより一層、夫婦・家族のきずなが深まることは最良の喜びである。どんな結果になったにしても、真実の向こう側に、人生の喜びがある、そう信じて仕事にまい進するだけである。