依頼人は50歳の女性。姉とともにGK探偵事務所に来た。

彼女は、大企業の数少ない女性管理職のひとりだ。キャリアを積み重ねた女性らしく、知的で気品ある美貌の持ち主。

夫は医療機器メーカーの要職にあり、家を空けることも多い。息子二人は、都内の有名大学と栃木県内有数の進学校に通っている。大きな家に住み、誰もが羨(うらや)む生活を送っている・・・。

しかし、彼女には誰にも言えない「心の闇」があった。 
相談に訪れた彼女は、何かにおびえ、視線も定まらないほど動揺している。相談内容を問いかけるが、なかなか言葉がでてこない。しばらく沈黙が続く。
その様子から、相当な悩みを抱えていることは察しがついた。

しばらくすると、姉に促され、意を決したように

「恥ずかしいんですが・・・」と紺のジャケットを脱いでノースリーブの左腕をさらした。そこには、紫色に変色したアザが数ヶ所あった。

それは、信頼しきっていた、ある男の裏切りの痕跡だった。

彼女は不倫していた・・・妻子ある彼、つまりダブル不倫である。
その彼とは、息子が中学時代に所属していた部活動の父兄会の役員同士だった。歳も彼女より5歳若く、男と女ではなく、価値観が一致する、良き相談者としての関係が1年ほど続いた。

しかし、彼の10歳になる娘が難病に侵され、彼の苦悩を聴いているうちに、次第に彼女の母性本能が刺激された。彼女は、夫に悪いと罪悪感に苛 (さいな)まれながらも、関係は3年間継続した。

ところが、そのバランスが崩れた。それまでは、お互いに、絶対に家庭を壊さないという約束の上に、交際は成り立っていた。 

彼の娘の難病を発端として、男と男の妻との関係が悪化。次第に彼の彼女に対する執着心が強くなっていった。二人で決めていた 「不倫のルール」が逸脱されはじめた。
電話が決めた時間を逸脱し昼夜を問わず、時には真夜中にもかけてくるようになった。メールも、誹謗中傷 (ひぼうちゅうしょう)の内容が1日20通もくる。

「やめてほしい」と訴えても

「他に男ができたのか!」などと、常軌を逸した内容ばかり。

距離をおこうとすればするほど、彼の行動はエスカレートして、彼女の会社のまわりや自宅付近を徘徊までするようになるなど、ストーカー行為が始まった。

それがさらにエスカレートし「逢わなければ、旦那に言うぞ。おれは、妻と離婚しても構わないんだから・・・」とされた。逢って別れを懇願しても、紫色に変色するほど腕をつかまれた。恐怖心が増幅し、仕事も手につかない。

警察相談しようかと思ったが、逆恨みをされたり、二人の関係がおおやけにでもなったりしたら・・・と思うと怖くて相談すらできなかった・・・。意を決した彼女は、姉に全てを打ち明けGK探偵事務所の扉を叩いた。

許されないストーカー行為。ストー カーの証拠収集とその男の懐に入るための調査がはじまった・・・。 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です