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 男性を尾行するにあたって、写真もなく通勤手段もわからない。しかし、写真についてはほどなく手に入れることができた。それは、勤務する在宅医療のホームページに顔写真が掲載されていたからだ。問題は、通勤手段だ。都内の利便性の高い場所にその在宅医療の建物はある。勤務が終了する19時から張り込む。2階建ての建物で、出入り口は2カ所。19時30分を過ぎたころから、職員が次々と退社していく。20時電灯が消えた。最後に出てきたのがその男性だった。男性は、職場を出ると10分ほど歩き駅へ。駅の階段を登り改札へ向かったが、改札には入らず、駅の反対側に出てゆっくりとロータリーを回りながらあたりに警戒の目を向けている。つまり、点検行動(尾行されていないかどうかを確認)ということだ。盗撮した映像を妻に見つかり、問い詰められてすべてを白状してしまった。依頼人に何度も電話を入れたことも知っているはず。依頼人が何らかの行動を起こしてくるのを警戒しているのだろう。
 結局男性はどこにも立ち寄ることなく職場に戻り、在宅医療の名前がついている社用車に乗り込み走り出した。男性が警戒していること、社用車で通勤していることが判明したため、深追いはせずに、2日程の間をおいて、車両とバイクで尾行し、車で30分の8階建てマンションの4階の自宅をつきとめた。この部屋のドアの開閉が見える場所は、唯一、マンションの道路向かいのショッピングセンターの立体駐車場の一部からだけ。翌朝8時、子供と出てきた男性の妻を撮影した。化粧も施さず、髪も整えていない、恐怖映画に出て来るようなそのどんよりとした容姿と異様な雰囲気の妻の姿を目にした探偵は息をのんだ。恐怖すら感じた。

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