【3代続く開業医の60代の夫婦。病院の医師をしている35歳の息子が唐突に結婚したい相手がいると。これまで女性との浮いた話はひとつもなかった。しかも、その女性は年上の38歳で2人の小学生の娘がいる。まさに青天の霹靂(へきれき)。父親がその女性に会った。その女性の饒舌さと調子の良さ、何より、男としての嗅覚というか、本能というべきか、女性から発せられる淫靡(いんび)さのようなものを父親は感じた。息子に対してもいい顔はできなかった。ただ今後の息子との関係を考えると、一概に反対するのもよくないだろうと、結婚調査をすることに。そして、その女性の恐るべき嘘偽りが次々と判明していく・・・】

 驚愕の嘘が判明した。それは、女性の離婚した理由だ。息子は、前夫の度重なる浮気とDVだったと話した。しかし、その事実は全く違ったものだった。女性の前夫は真面目で、親思いの優しい男だった。長女ができて看護師を休職したものの、看護師としてのキャリアのためや家計のために復帰したいから、2人目の子どもは最低でも3年は作らないと夫婦で合意していた。長女も1歳になり、農家を営む夫の両親に娘の世話を頼み、元の病院へ復帰したのだ。

 その半年後、また妊娠した。前夫は釈然としない何かを感じたが、波風を立てることもなく2人目の娘が誕生した。その後、2人目も夫の両親に預け、女性は看護師として復帰した。次女が2歳を迎える頃、夫の両親や姉夫婦は次女が身内の誰にも似てない事に疑惑を感じた。夫もその女性も一重でうりざね顔だったが、次女は二重で丸顔だった。成長と共にますます「似ていない」とささやかれることに。時期を同じくして、女性の行動に変化が。両親や夫に子どもたちを預け、研修・歓送迎会と言って、深夜の帰宅、外泊が増えた。それでも夫は妻を疑うことはしなかった。

 しかし、不審に思った両親は、素行調査をして、女性が同じ病院の男性看護師と不倫関係にあった事実をつかむ。その男性の顔と次女がよく似ていたことから、弁護士が仲介し離婚とDNA鑑定をする事態にまで発展した。次女は、不倫相手の子だった。

 離婚した女性は別の病院に移る。そこで、今度は医療器材会社の妻子ある男性と不倫関係になり、再び病院を移った。これらの証言を集め、重ね合わせて事実関係を積み上げ、その裏を取った。この事実に依頼人は驚がくしたが、まずは、息子とその女性を離れさせることが得策として、実家の開業医をすぐさま継がなければならないようなシナリオを作り、息子に病院を辞めて帰ってきてもらうことにする、と事務所を後にした。まさに「事実は小説よりも奇なり」という調査だった。

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