「35歳になる息子が結婚したい相手がいると・・・」と、県北から来た60代後半の夫婦。品格が備わっていて、話し方、表情も穏やかで、互いの顔を見合うその所作は、仲睦ましい夫婦であることが見てとれる。この夫婦は、3代続く医者の家系で県北で開業医をしており、息子は現在仙台の病院で医師として勤務している。長女は、福島県の開業医に嫁いでいる。

 その息子から結婚したい相手がいると今年の正月に帰省した時、唐突に告げられた。もちろんいい縁談であれば望ましいことだが、その相手について尋ねると、とても賛同できる女性ではなかったと母親は語気を強くした。その女性は、離婚歴があり、小学生の娘2人がいる38歳の看護師だという。両親にとってはまさに青天の霹靂(へきれき)で、ただ戸惑うばかり。

 息子には40歳を目途に跡を継がせることになっている。息子は、学生時代も含めて、一人として交際相手を連れてくることもなかった。今は他界している祖父母の愛情を一身に受けて、気は優しく、真面目で家族思いだった。振り返ってみても、反抗期もなかったように、夫婦にとっては自慢の息子。家柄もあって地元の有力者等の仲介で3度ほど見合いをしたが、うまくいかなかった。女性に対しては奥手で、お洒落とは無縁で、本人が恋人と揶揄(やゆ)されるほどの読書好き。もしかしたら女性には興味が無い…と心配していたほどだ。

 その息子から、突然、結婚したい相手がいると告げられた。母親は、冷静さを保つことができずに、最後まで話を聞かずにその場を離れた。父親は動揺を隠し、その女性について息子に尋ねていく。女性は看護学生時代に知り合った大手家電メーカーの技術系会社員と交際、妊娠して籍を入れた。長女を出産し、年子で次女も生まれたが、30歳の時に離婚。その理由は、夫の度重なる浮気とDVだった。そして看護師として働きながら、2人の娘を育てているという。看護師としての評判も良く、真面目で子供想いの女性だと語った。父親は、妻が反対するのは目に見えているが、男として息子の気持ちを、一刀両断することはできないと、妻には内緒で後日その女性と会うことにした。

 そしてその日は訪れた。しかし第一印象で、父親は肩を落とした。その女性の饒舌さと調子の良さ、何より、男としての嗅覚というか本能というべきか、女性から発せられる淫靡(いんび)さのようなものを感じしたと父親は語った。息子に対してもいい顔をできずに帰ってきたと。妻にそのことを打ち明け、今後の息子との関係を慮ると一概に反対するのもよくないだろうと結婚調査することに。しかし、その女性の恐るべき嘘偽りが明らかになっていく…。

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