【夫は、一流と言われる国立大学を卒業し、有名企業で将来を嘱望された研究者。父親も一流企業の重役を務め、実家も都内に一軒家を構えている。一方、妻は公営住宅で母子家庭に育ち、経済的な理由からやむなく高校を中退した。夫は、この境遇と学歴の差でモラルハラスメントを続ける。耐えきれず、母親のもとに避難しても夜中に玄関をたたく。さらには、女性を自宅に連れ込んでいる気配もある。妻の母親は、母子家庭で辛い思いをさせてごめんなさいと泣いた。初めて見る母の姿。今まで強く毅然とした母しか見てこなかった。そして母は、妻になけなしの現金を差し出した。これ以上娘が侮辱されるのは許さないと…。【(3/4 前回より)】
夫の幼児性や凶暴性により、実際に妻に対してどのような言動や行為があるのか?その検証と証拠収集をすることが先決。そこで、妻が話しやすいようにと、女性のベテランカウンセラーと二人だけで向き合ってもらった。話は3時間を超えた。そこには、弁護士にも語ることがなかった、夫の異常行動があった。
妻が入浴すると、夫は必ず妻の下着を確認し、いろいろ難癖をつけてくる。時には下着を持ち出し「浮気してるだろう!下着を見ればわかる!」と怒鳴り、その下着をはさみで裁断してしまうことさえあった。また、テレビはドラマやバラエティーの類が一切制限された。これだけに留まらず、ニュースや時事問題を一緒に見ることを強要し、経済問題等について妻に質問を浴びせ、妻が答えられないと、お前はバカだ、中卒だと罵り、挙げ句には子どもの知能指数が心配だ、お前の血をひいてるからなど、罵詈雑言をまくし立てる。そして頭の悪い奴が作った飯なんか食べられないと食卓を荒らすなど、聴いただけでも心が暗澹となるような話ばかり。そんなことを知らない友達たちからは、玉の輿と冷やかされ時には妬みを言われることも少なくない。劣等感と偽善。そこには絶対に幸せは存在しない。自分らしく生きたい、自分を取り戻したい…と、妻は堰を切ったようにその思いを吐き出した。
調査開始。この事実を証拠として立証するため妻に協力してもらい、録音・録画を続けること20日。妻が語った事実の全容がほぼ明らかになった。また週末、妻が無理やり実家に帰らされた後、張り込みを続け、女性が自宅へ宿泊している事実もつかんだ。さらに、その女性が以前結婚を約束していた職場の同僚であることが判明した。弁護士を交えての報告になった。その弁護士も、同じ女性としてこの過酷な現実に涙を隠すことはできなかった。闘いは幕を開けた。最後までに私たちは、妻に寄り添っていく。
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