
手掛かりはないのか…と諦めかけていた時、衣装ダンスの籠の中にA社の「多機能携帯音楽プレーヤー」の空き箱を見つけた。
親に確認すると、これは娘に言われて誕生日にプレゼントしたものだ。
親は、この 「多機能携帯音楽プレーヤー」 が音楽やゲームしかできないものだと思っていたという。
しかし、Wifiがあるところなら、インターネットもメールもできる。
そのことを伝えると、驚きを隠さなかった。
また、この機種のメール履歴やアドレス帳は、ID・ パスワードが分かればパソコンからもアクセスが可能なのだ。
しかし、ID・パスワー ドを変えてしまうと、本人が使えなくなってしまう。
できる限りそれは避けたい。三日三晩、娘が置いていった携帯電話や家の共用パソコン等を解析し、
ついにID・パスワー ドをヒットさせアクセスすることができた。
しかし、そこには驚愕 (きょうがく)の事実が。
少女は、俗にいう「神待ち「サイト」 といわれる、家出したい女子中高校生を募集しているサイトに
「家出したいので~。誰か~」というような内容を載せていた。
全国各地の20人以上の男とのやり取りがなされていたが、その大半は買春目的のもので、
そのたぐいの男たちとのメールは全て遮断していた。
浮上したのが、家出直前までやりとりを継続していた東北地方に住む、自称35歳の自営業の男だった。
この男とは写真まで交換し合っている。
そこには、犯罪であることを認識していながら、家出の手順や注意事項まで指示していた。
そして、失踪当日の朝7時20分 「もうすぐ着くよ!」とのやり取りが最後だった。
限られた情報の中でこの男を調査すると、いろんなサイトに「家政婦募集!若い子希望!」
などという怪しげな掲示をしていた常習者であることが判明。
間違いなく、この男のところにいる。
一刻も早く少女を保護しなくてはならない。
身体の安全が 最優先だ。
すぐさま東北に飛 んだ。
地元の警察に事情を説明したところ、幸い我々の調査内容が「刑法224条」の証拠になる、
つまり事件性があると判断してくれたことで協力を取り付けることができた。
それから3日後、少女を無事保護することができた。
◆刑法224条(抜粋)◆未成年者を略取し、又は誘拐した者は、3月以上7年以下の懲役に処する。
【未成年略取・誘拐罪について】 未成年者を保護されている環境から離し、犯人又は第三者の支配下に置くことで成立する。
未成年誘拐罪は、だましたり誘惑して自分から従うようしむけて支配下に置いたときに成立する罪。
ネット社会に潜む危険な現実。
この現実から目をそむけることはできないのだ。
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