アスポ探偵シリーズの愛読者だという30歳代の夫婦とその息子。
まさか自分たちが相談に来ることになろうとは、とため息を漏らす。

両親の怒りに満ちた悲痛な訴えがはじまった。
それは2週間ほど前のこと、息子が嫁の両親に呼び出された。
それによると、嫁は精神的に疲弊していて息子としばらく別居をしたいと訴えてきたという。

まさに青天の 霹靂(へきれき)。
耳を疑う息子と両親。
息子にはまったく身に覚えもなく、わけがわからない。

嫁の両親は、「精神的にイライラが続いていて、生理的にも夫を受け入れなくなっている。
しばらく別居して気持がおちつけば、また元の生活に戻れるし、それまでは責任をもって娘(嫁)をフォローするから、
娘の願いを聞き入れてほしい」と言ってきたという。

息子は茫然(ほうぜん) 自失、わけのわからないまま、結局家を出て、車で15分ほどの実家に戻った。

4歳になるわが子と離れることが何よりもつらく胸を抉(えぐ) られる。
確かに振り返ると、 嫁が時折見せるヒステリックな振る舞いが日を追うごとに頻繁になってきて、
もしかしたら精神的な疾患でもあるのかとも感じていたと、暗い表情をのぞかせる。

特にここ2カ月は、息子に出ていけと言わんばかりに ヒステリックな面が増幅されてきていたという。
そんな息子に対して両親は、嫁の いようにされる必要はない、男としての気概を見せろと常に鼓舞してきたが、
永い交際期間の中で既にその力関係は確立されていた。

夫婦の序列を変えることはできなかった。
嫁の両親が数多くの不動産を持つ裕福な家庭であったこと、さらには嫁の両親が所有している
2階建ての貸家(一戸建)で 新婚生活をはじめたことで、息子の肩身が狭くなったと振り返る。

2人は高校時代から交際し、息子は高校卒業と同時に父親が営む家業を継いだ。
嫁は短大へ進み、卒業後まもなく結婚し、 英会話教室のバイトをはじめた。

嫁は結婚後、まるで人が変ったように夫の両親と距離をおきはじめた。
特に子供が生まれてからは、極端に夫の実家を忌避するようになり、子供を両親に会わせるのは年に1、2回程度だった。

夫の両親も初孫なのに、ろくに抱くこともできなかっと不満を漏らす。
両親の堰(せき)を切ったような不満の声に俯(うつむ)く息子。

実は、息子はこのまま嫁が落ち着くまで待とうと思った。
しかしこれまでの嫁の態度への怒りが乗り移ったように、両親がそれを許さなかった。
何もなければそれはそれでいい。

しかし万が一にでも、男の影でもあったら絶対に許さない!!

調査がはじまった。
これほどまでに衝撃的な場面に遭遇するとは、誰一人として想定することはできなかった…。

※ 本文は依頼人の了承を得て、プライバシーに配慮しています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です