友人に付き添われてGKに来た、40代後半の夫。
人のよさそうな優しい目が印象的だ。ただ、口下手なのか、ことの顛末(てんまつ)については、一緒に付き添ってきた友人が口を開いた。

結婚して20年。夫婦二人三脚で飲食店を営んできた。
決して店は大きくないが、実直な夫と、明るく笑顔の絶えない妻の接客、そしてなによりも「安くておいしく量が多い」ことで、通いつめる客は多い。

妻は東南アジア系の外国人で、今ではそう珍しくないが、結婚した当時は、偏見と差別の目が突き刺さるような思いも多かった。
しかし、実直な夫と、日本人には備わっていない明るさとフレンドリーな気質を持ち合わせていた妻は、溶け込むのも早く、近所づきあいもできるようになった。

年子で2人の女の子にも恵まれた。
2人の娘が高校に入学してから、妻はしきりに外に働きに出たいと言い始めた。
夫は、外に働きに出るのもいい経験になると思い、それを許し、妻は、外国人が多くいる工場で働き始めた。
今思えば、それがいけなかったと後悔する。

働き始めて3カ月を経過したくらいから、仲間の誕生会、日本語を教えるなどの理由を並べ立て、次第に帰りも遅くなり、時には外泊してくることさえもあった。

そしてある日、夫が飲食店組合の会合から戻ってくると、「3カ月間だけ自由にしてください。捜さないでください。必ず戻ってきますから。わがまま言ってごめんなさい」と一通の手紙が。
子供たちにはちょっと出かけてくるとだけ。家からなくなっていたのは、ほんの少しの衣類。

翌日、店を休んで妻の勤務する工場へ行った。すると、2週間前に退職しているという。
予想だにしなかった展開に呆然(ぼうぜん)とする夫。

妻の交友関係を教えてもらい何人かと会っても、誰に聞いても知らないの一点張り。夫は、妻と出会ってからの思い出を回顧し、あの妻が愛する家族を捨てて、このまま帰ってこないはずがないと、3カ月間待つ選択をした。


しかし、それが大きな誤りだった。20年もの間、そのほとんどを家族だけで四六時中過ごしてきた人間が、外の刺激的な世界を垣間見てしまったら、その刺激に逆らえる人は少ないからだ。

妻の捜索は、思いもよらない顛末が待っていた…。【後半に続く】

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