
弁護士の紹介で、栃木県東から相談に来た40代の妻と父親。
夫は一流企業に勤め国内外の出張も多い。
夫は結婚してから1年間欠かさず、その月の出張予定表を台所の冷蔵庫に貼っていた。
しかし、この3カ月というもの貼られることはなく、妻が問うと、後で会社から持ってくるという返事があるだけだった。
妻は、4年前に母親が亡くなったため、脳梗塞の後遺症で左半身に障害が残る父親と同居することになり、
父親に家を改築してもらい夫と子どもと一緒に移り住んだ。
夫に対しては、父親と同居していることで、気を使わせているという負い目のような気持ちもあり、
できるだけ自由な気持ちでいてもらおうと、口うるさいことは言わないように常に心がけていた。
夫と父親の関係も特段悪くなく、平穏な生活を過ごしていた。
しかし、ふと気が付いてみると、徐々に夫婦の会話が減っていき、夫は自分の書斎に引きこもるような時間が増えていった。
定時退社日である水曜日も帰宅は夜中になり、自宅で夕食をとることが少なくなってきた。
出張予定表を貼らない、夕食もとらない…。
妻は何か釈然としない思いが頭から離れなくなっていく。
そんな思いに駆られ、夫が入浴しているすきを狙って、夫の車を開けてしまう。
車内には鼻をつくような芳香剤が置かれ、トランクの隅には、見覚えのない夫のものらしき服や靴などが
隠されるように置かれていた。
それでも妻は、気にし過ぎだと自分に言い聞かせて、その後は努めて夫の車の車内を見ることはしないように心がけていた。
しかしそんな思いもつかの間、ある日、子どもの進学の相談があると持ちかけても、夫は何の返事もせず、
まっすぐ浴室に向かってしまった。
そんな態度が癖にさわり、再び車を開けてしまう。
すると今度は、見たことのない化粧ポーチと、花柄の布に包まれた空のお弁当箱を発見してしまう。
もはや疑惑の域を超えてしまった。
父親に相談すると、父親も夫が自分を避けているような感じがすると打ち明けた。
ただ、長男は高校受験を来年に控えているし、二男は中学入学を控えている。
今のところ、給料もきちんと入れてくれることから、 波風を立てないよう静観してみようと言うことになった。
それから3カ月、夫婦の会話は途絶えた。
会話はすべてラインでのやりとり。
同じ屋根の下に暮らしながら、必要最低限の会話はラインで賄う。
妻はいら立ちを隠せなかったが、息子の受験に支障をきたしてはいけないと耐えていた。
しかし、夫の無断外泊は増えていく。
父親に進言され弁護士の元に。
そして調査する決意を固めた。
妻の足元を見透かしたような夫の真実が浮き彫りになっていく…。
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