嘘と偽りの男【後編】

都内の大学病院で研修医をしている娘。
男性との交際経験も乏しく、女性としての身だしなみにもお洒落にも無頓着で、
勉強・研究一筋だった娘が結婚したいという男性と、近くのホテルのラウンジで突然会うことになった。

都内で勤務医をしているというその男性は、娘より20歳年上で礼節もなく、派手なブランド品を身に付け調子が良く落ち着きがない。

父親は早々に帰宅し娘に激怒した。
母親がその男性のことを聞いていくと、あまりにも相手のことを知らな過ぎる娘に愕然とした。
知っていることと言えば、出身は栃木県で、都内のクリニック勤務医として働いていることと、
以前短い期間結婚していた時期があるということだけだった。

それから2カ月後、許されざるべき事態が露呈した。
娘が妊娠していたのだ。

医者としても半人前なのに結婚して子供を産むなどとは絶対に認められないと、
親・兄弟は猛反対し、中絶をするよう説得し続けたが、娘が首を縦に振ることはない。
両親や近い身内は医者が多く、そろっての説得にも耳を貸そうとはしない。

今まで親に反抗したことがない娘が、頑なに拒絶している。

男の素性調査をすることに。
男の実態が次第に明らかになっていく。

男は、つい2ヵ月前に離婚調停を経て離婚に至ったばかりであることが判明した。
結婚期間は短い間とは嘘で12年間も婚姻生活を送っていたこと、さらに驚愕したのは数千万円の借金もあったことだ。
男を知る人物たちにも接触していくと、酒・女・ギャンブル…悪評しか耳にしない。

この調査結果に、両親・身内はますます反対の色を濃くしていった。
毎日のように娘の暮らすアパートに説得に出向いても埒があかないどころか、
ついには病院内に寝泊まりすると言って帰宅すらしなくなった。

男の実態を教えても胎児とは関係がないと頑ななまでに中絶を拒んだ。
大好きな祖母が説得してもただ泣きじゃくるだけ。

その間、男は両親に対して連絡のひとつもよこさない。
娘の実家が茨城県で 3代続く医者の家系で資産家であることを狙った打算的な計算が働いていると憤りしかない。

父親の弟がその男と対面し、中絶の説得をしてほしいことと、結婚は認めないことを伝えたが、
「彼女が産みたいといっているので」、離婚前から交際していたことについても
「離婚調停中、つまり結婚生活は破たんしていた」と平然と言い放ち、まったく悪びれた様子もない。

対面した父親の弟もこの男のふざけた態度に怒り心頭で席を立つ始末だった…。

この結末は、残念ながら記事では伝えることはできないほどの大きな事態と発展していった…。