「弁護士からの紹介で…」と、栃木県南に住む60代の妻が娘を伴ってきた。
小柄で、ショートカットが似合う凛とした話しぶりが印象的だ。

家族で自動車整備工場を営み、社員も10名ほどいる。
妻には離婚歴がある。
30数年前に会社の同僚と職場結婚したが、夫の酒癖の悪さに耐えられず、わずか半年で実家に戻った。

実家の父が自動車整備業を営んでいたため仕事を手伝うようになり、10年が過ぎ35歳を迎えた頃、
取引先の紹介で10歳年下の男性と再婚、娘を授かった。

真面目な夫は、仕事に熱心に取り組み、個人商店だったものを会社化するまでにした。
その後、父親も娘夫婦に家業をまかせ、夫婦2人3脚で懸命に働いてきた。

会社も軌道に乗り信頼する社員も育ってきた。
時間的にも金銭的にも余裕が生まれ、家も新築したのが2年前。

妻は、夫に感謝し、高級外車も買い与えた。
今思い返せば、その優しさが甘かったと後悔する。
ここ1年、妻が何も言わないことをいいことに、夫は接待だ、付き合いだと言って週の半分は朝帰りをするようになった。

娘とともに、女性でもいるのかと疑念を抱き始めた。
そして看過できない事態が少しずつ表面化していく。

会社の経理を担当している娘が、夫のお金の使い方と使途がわからない金銭が出て行くことに不信感を抱き始めた頃、
偶然にも栃木県南のある主要駅近くのマンションの駐車場に夫の車を見つけてしまった。のだ。

妻は驚くことなく弁護士に相談し、まず真実を知ることが重要と調査をすることに。
妻は、ただの浮気ぐらいなら放任してもよいとの器量を持ち合わせていたが、「会社の金を使い込んでいる」 ことは、
絶対に許せないと憤りを隠せなかった。

調査開始。
張り込む住宅地は、新興住宅地で防犯意識もことさら高く、困難を極めた。
工務店・塗装店等の仕様に変装させた調査用の軽ワゴンを用意して慎重に張り込み、
追跡車とバイクを隠し、尾行を徹して真実を暴いていった。

結果として、夫は2人のアジア系外国人と交際していた。
2人それぞれにマンションを借り与え、1日たりとも空けることなく、交互にそれらの女性のマンションに出入りしていた。

その行動は昼夜を問わず、時には昼と夜と別々の女性のマンションに出入りしている。
マンション向かいのビルの非常階段の踊り場からベランダを注視すると、
レースのカーテン越しに上半身裸の夫の姿や、日中出かけた公園で、腰に手を回し満面の笑みで顔を寄せ合う姿も‥。

真面目で仕事熱心な男が手に入れたお金と時間の余裕。
踏みとどまることのできなくなった快楽。

調査結果を手にした妻は、離婚に向けて弁護士に託した。

※ 本文はいくつかの事例を基に構成されています。盗用・無断転用・無断転載を禁じます。

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