「ついに禁断のメールをのぞいてしまった。
全身の毛が 逆立った。
それからはメールの確認が日課となり、眠れない夜が続いた。
日々のメールには、妻の浮気を疑う余地のない赤裸々なやり取りが記されていた‥。」

妻のメールからは毎週木曜日、子どもが学習塾にいる3時間の間に密会を重ねていることが読み取れた。
「早く会いたい」というほかに、紙面では表現できないような猥雑 (わいざつ)で、
相当深い関係にあることを確信させるメールも存在する。

夫は、気が遠くなるほどの苦しさに耐えた。
とにかく平静を装い、不貞行為の証拠をつかむこと。

それまでは、男として最低限の矜持(きょうじ)を保とうと苦悩した。

調査開始。妻の車を尾行する。
妻の車は、自宅から30分ほどの学習塾に向かった。
警戒の目を向けてくることはない。

午後6時前、子どもを学塾の前で降ろし、そのままコンビニに立ち寄る。
明らかに2人分の飲料水等を買い込む。

その後、小高い高級住宅地内にある公園の駐車場へ乗り入れた。
そこは15台ほどの駐車スペースしかなく、コの字型になっている。
三方が法面で、しかも草木が密集しているために周りからはまったくといっていいほど、人目につかない。
しかも、古びた街灯はわびしい光を帯びているだけで、ほとんど暗闇に近い。

妻は、駐車場で最も死角になっているところに停車してあるセダンの隣に車を止めた。

車を降りた妻は、迷うことなく後部座席のドアを開けた。
ガラスに張られている黒フイルムに遮断され、特殊赤外線のプロ用機材を用いても、
車内の様子はまったくうかがい知ることができない。

そこで、迷彩服を重ね着した探偵が生い茂る植え込みのほうから、
車の正面斜め上360度の方向から車内を見るために進み出る。
後部座席に揺れ動く二つの影は確認できるものの、人定までには至らない。

弁護士からの紹介による依頼が多く、裁判の証人に立つこともある弊社は、
これでは不貞行為の証拠としては疎明できないことも知っている。

辛抱強くチャンスを待つしかない。
このような状態が3回続いたが、焦りはない。
経験上必ずホテルへ行く日があると確信しているからだ。

チャンスは、4回目の調査の日に訪れた。
その日は、学習塾で試験がある日で、終了する時間がいつもより1時間長かったのだ。

妻を乗せたセダンは、程なくしてネオン輝くホテル街へ入っていった‥。

後日の素性調査で、その男性は妻よりも二つ年上で妻子があり、
妻が結婚直前まで勤務していた会社の先輩であることが判明した。

しかも、当時結婚式にも参列していたという驚愕の事実も‥。

※ 本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。

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