夫の肌を忌避するようになった妻の浮気を疑い始めた。
妻は薬剤師で、同業で組織するボランティア団体の役員として月に1、2回各地に出張する。

妻の不在時に見たクローゼットの奥にひっそりとあった派手な下着。
嫉妬に震えた。
その妻が来週末名古屋へ出張する…。

調査当日。
依頼人の夫が出勤してから1時間後、自宅にタクシーが横付けされた。

O駅で降り、新幹線ホームへ向かう。
東京駅で乗り換え、名古屋駅に降り立ち、会議の会場となるホテルに。
既に60人ほどが集まっている。
会場のドアが視認できるソファで見張る。

3時間の会議中、妻は一度も会議室から出てこなかった。
隣の会場で懇親会がある。

会議が終わり一斉に参加者が出てくる。
妻は懇親会に参加することなく会場を後にした。

妻はタクシーを拾い、名古屋城に近い有名なホテルで降りた。
チェックインをしてカードキーを受け取る。

妻の部屋を特定できるかどうかが、この調査の成功の鍵を握る。

人も多く尾行することは難しくなかったものの、ポーターが妻の荷物を持ち、
エレベーターに同乗したことは予想外だった。

従業員は、犯罪の未然防止のための防犯教育を受けているからだ。
あからさまに警戒の目を向けてくることはないが、細心の注意を払わなくてはならない。

後から同乗した探偵は、 ポーターから階数を聞かれた。
ランプが点灯しているのは、10階と14階の2つ。

エレベー ター内には、妻とカップル1組と探偵一人。
とっさに14階と告げた。10階で降りないことをひたすら祈る。

しかし、妻は10階で降りる気配。
不審がられずに、妻とポーターとともに10階で降りなけれ 部屋の特定が困難にな る。

そして10階で止まった瞬間、探偵は携帯電話のフェイク着信(実際に電話はかかってきていないが、
着信音を鳴らすこと)を作動させ、迷惑のかからないようにとうまく10階で降り、部屋を特定した。

内偵の結果、妻の宿泊する部屋はキングサイズのダブルの部屋だった。
ロビーで待機する探偵に、部屋の出入りの映像を抑えるために適した部屋番号を伝えて、宿泊可能か確認させる。もちろん、不審がられず予約するために、「亡き妻との思い出の部屋…」というシナリオでアプローチした。
幸い、その部屋がとれた。

そして、約1時間後…。
会場で見かけた30代後半の紳士然とした男性が部屋の中に消えた。

明日も会議がある。
会議終了後は、男の尾行に切り替えその素性を暴く。
仕事とは いえ夫の気持ちを思うと、その現場には殺伐とした空気が流れた…。

※ 本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。

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