
定年退職後、家にいることで夫婦間の距離が近くなり過ぎ、夫は妻を家政婦のように扱い、
自分は自由を謳歌 (おうか)しているのに、妻の外出には口うるさい。
そんな時、夫が10歳下の教え子と浮気をしていると夫の友人から告発があった。
この先のことを考えると暗たんたる気持ちになる。
証拠をとって闘い抜く。
残り多くない人生の自由を手に入れるために‥。
夫がカメラ仲間たちと熱海に出かけるという日を調査日とした。
10時、妻が仕事に出かけてから1時間後、家の前にタクシーが横付けされ、向かった先は栃木県のJR宇都宮駅。
新幹線ホームでの待ち合わせもなく、そのまま乗車する。
座席付近にも女性の姿は確認できない‥。
熱海に行く確証はあった。
それは、妻が前日の夜、夫のボストンバッグに忍ばせてあった、旅行会社のチケットを目にした。
そこには、ホテル名と人数(2名)が印字されていた。
妻はそのやり場のない怒りに、チケットを破り捨ててやるという激情が襲ったと涙ながらに訴えてきた。
しかし、証拠をつかむためと踏みとどまり、ボストンバッグに戻した‥。
その情報を生かし調査に万全の態勢を期すため、同ホテルを予約し、調査員1人を熱海に先回りさせた。
これで、調査員がホテル内の出入り口を含めた構造や、撮影場所の選定などの下見調査を円滑に実施できる。
加えて、備えつけの浴衣等に着替えることで、不審がられるリスクを回避することができるし、
夫たちの部屋の割り出しが容易になる。
結局、夫は一人で新幹線に 乗車し東京駅に降り立った。
すると、その視線は隣の車両から降り立ち手を振る女性に向けられた。
つまり、警戒したのか車両を別々にしたということだ。
その女性 は、背は小さく小太りで化粧映えもしない、妻のたたずまいとはまるで正反対の女性だった…。
二人は仲むつまじい夫婦きどりで熱海駅に降り立った。
ホテルの送迎バスに乗り込みフロントへ。
調査員は、二人の手荷物を持つ従業員とともにエレベーターに同乗する。
不審の目を向けてくることはない。
そして、調査員は部屋を特定した。
その後二人は、浴衣に着替えホテルの周りを散策し浴場、夕飯会場へ向かった。
満面の笑みで夕食を囲む。
そして、 ホテルの外から、二人の部屋の明かりが消えるまで映像を撮り続ける。
海を一望するホテルの部屋のカーテンは閉じられることが少ない。
これらすべての映像一つ一つが証拠として積みあがっていく。
後日、証拠を手に依頼人を伴い 弁護士事務所に向かった。
「依頼人の痛みを自分の痛 みに置き換える想像力こそ、 真の探偵の重要な素地なのです」と駒木代表取締役。
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