娘の告白。突然だった。
同じ工場に勤務する一回り年上の男性の子を妊娠した。
男性を自宅に呼んだ。良い印象はなかった。

しかし、娘とおなかの子のことを考え、籍を入れるという男性の言い分で幕を引いた。
娘が3歳の時に、夫の酒乱が原因で離婚して、それから20年。

母娘2人で力を合わせて生きてきた。
その娘が男性の元へ。
次第に娘が実家に来ることもなくなり、電話もなくなっていく。
これまでに味わったことがない孤独と寂寥感。

男の本性は、人前とは正反対で、「ネトゲ廃人」のように、ゲームとネットばかりに興じている男だった。
平気な顔で無断外泊もする。
揚げ句の果てに、公然と浮気しているようなことを口走る。
娘が意見を言おうものなら、恐ろしい形相で怒鳴り、部屋をめちゃくちゃにするような男だった。

出産を2カ月後に控えた娘は、勇気を持って実家に戻った。
母親は怒りに震えた‥。

娘が実家に戻ったというのに、電話すらかかってこない。
金曜日、夫の退社時間から尾行する。

夫は栃木県の勤務先から、そのままショッピングモールに隣接するゲームセンターの駐車場に車を乗り入れる。
ほどなくして隣に車両が横付けされ、女性が夫の車に乗り込んだ。
その後、高速道路に乗り、隣県のとあるインターで降りラーメン店に入った。
探偵も潜入する。夫のにやついた顔だけがやけに目立つ。

女性はあきらかに夫より年上。40歳は超えているように見える。
その後、車は高速道路沿いのホテルへと消えた。

そのホテルは、古ぼけた昔ながらの一戸建てが連なる造りになっている。
9戸の部屋があり、その9戸が円をなすような配置になっていて、中央部分には、
互いの視界をさえぎるように、樹木が乱立している。
探偵泣かせの極めて撮影が難しいホテルだった。

調査車両がホテル内を徐行しつつ、2人が部屋から出てくる映像を撮るためのプランを策定する。
結果は、2人が入室した3部屋隣の駐車場のカーテンの隙間しかないという結論。

しかし、その部屋は入室中ですぐには入れない。
いつ出てくるか分からない状況に焦りが出てくる。

しかし、3時間後その部屋が空いた。
凍てつく寒さの中で腹ばいになり、カメラを構え続ける。
辛抱との闘いが始まった。

張り込みして8時間、陽が昇り、気持ちをリセットして集中力をたぎらせる。
それからさらに4時間、9時を回ったころ、2人は出てきた。
完璧な映像に母娘の悔しさをはらしたように気持ちがたかぶった。

後日、女性の素性が判明した。
離婚歴のある44歳の女性だった。
この女性は、4年前まで、夫と同じ職場にいた女性だった。
母娘の本当の闘いの幕が開く‥。

※ 本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。

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