依頼人は30歳の女性。
姉を伴ってきた。

某有名企業の数少ない女性管理職のひとりだ。
キャリアウーマンらしく知的な雰囲気と、気品を備えた美貌の持ち主。

夫も医療機器メーカーの要職にあり、家を空けることも多い。
息子二人は、都内の有名大学と県内有数の進学校に通っている。

大きな家に住み、誰もがうらやむような生活を送っている。
しかし彼女には誰にも言えない心の闇があった。

相談に訪れた彼女は何かにおびえ、視線も定まらないほど動揺しているのが見て取れる。
相談内容を問いかけるがなかなか言葉がでてこない。

沈黙が続く。
ただその様子から、相当な悩みを抱えていることは察しがついた。
しばらくすると姉に促され意を決したように「恥ずかしいんですが・・・」と紺のジャケットを脱いでノースリーブの左腕をさらした。
そこには紫色に変色した痕が点在していた。

それは信頼しきっていた男の裏切りの痕跡だった。

彼女は不倫していた。
妻子ある彼、つまりダブル不倫だ。
その彼とは、息子が中学時代に所属していた部活動の父兄会の役員同士だった。

歳も彼女より5歳も若く、男と女ではなく価値観が一致するよき相談者としての関係が1年ほど続いた。

しかし10歳になる彼の娘が難病に侵され、彼の苦悩を聴いているうちに、次第に彼女の母性本能が刺激された。
彼女は、夫に悪いと罪悪感にさいなまれながらも、関係は3年間継続した。

ところがそのバランスが崩れた。
それまでは、お互いに絶対に家庭を壊さないという約束のうえに交際が成り立っていた。

娘の難病を発端として、妻との関係が悪化。
彼の彼女に対する執着心が強くなっていった。

二人 で決めていた「不倫のルー ル」が逸脱れはじめた。
決めた時間を逸脱して、昼夜を問わず、時には真夜中にも電話をかけてくるようになった。
メールも、誹謗中傷 (ひぼうちゅうしょう)ばかりが、今では1日20通もくる。
やめてほしいと訴えても、「他に男ができたのか!」などと常軌を逸した内容ばかり。

距離をおこうとすればするほど、彼の行動はエスカレートして、彼女の会社の廻りや自宅付近を徘徊までするようになった。
挙句の果てには「逢わなければ旦那に言うぞ。おれは妻と離婚しても構わないんだから」と脅された。

逢って別れを懇願しても、紫色に変色するほど腕をつかまれた。
恐怖心が増幅し、仕事も手につかない。
警察に相談しようかと思ったが逆恨みをされたり、二人の関係がおおやけにでもなったらと思うと怖くて相談すらできなかった・・・。

意を決した彼女は、姉に全てを打ち明けGKの扉を叩いた。
許されないストーカー行為。 ストーカーの証拠収集とその男の懐に入るための調査がはじまった。

※ 本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。

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