父親と4歳になる女の子と ともに訪れた30代の妻。
妻の不安そうな表情を察してか、娘はまだ4歳なのに心配そうに妻の顔をのぞき込んでいる。

夫は、都内の有名私立大学を卒業し、県内に本社を置く一流企業の管理職をしている。
会社では将来を嘱望されている人物で、5年次の先輩を飛び越え昨年管理職に大抜てきされた。
しかしここ1年、帰宅は深夜で、週1回は外泊での出張がある。
週末の休みさえも仕事と言って家をあけることも多くなった。

少しでも妻が愚痴を言おうものなら、子供のいる前でも頭ごなしに怒鳴られる。
妻が高卒なのを馬鹿にする。
それだけにとどまらず、 農家に生まれた妻を「会社という組織をわかっていない」と侮蔑する。

夫の家は、代々、一流企業要職を勤め上げてきた地元でも知られた家柄で、夫は一人息子。
これまでも妻とその両親は肩身の狭い思いを強いられてきたと振り返る。
妻は、夫が出世するということはこういうものなのかと自分に言い聞かせ、無理やり納得させてきた。

友人たちの前でも、いい大学を出た出世頭の夫を持ちにマイホームをもつ恵まれた環境にいる妻を演じてきた。
孤独感と寂寥(せきりょう)感に打ちひしがれていた。

そんな妻の心の隙間を埋めてくれるのは、ミクシィに代表されるソーシャルネットサービスだった。
その世界には、見栄も何もない本当の自分がさらけ出せた。
同じような悩みを持つよき相談相手もできた。

そこで初めて「モラルハラスメント」(精神的暴力)ということを教えられた。
また、そのよき相談者は自分の体験から、「浮気でもしているんじゃない?」と思いもよらぬ一言が。

いつしか妻は、毎日のように夫のパソコンの履歴を確認するのが習慣になっていった。
それから、2カ月、怪しいことは見つからなかった。

釈然としない思いになりかけた時、ついに都内の高級ホテルへ宿泊予約してある事実をつかんだ。

妻は見てはいけないものを見てしまった罪悪感と、もしパソコンを見たことがばれたら、
夫の逆鱗(げきりん)に触れるかもという恐怖におののいた。

自分の両親に打ち明けるかどうか、心配はかけたくないと悩みに悩んだ。

親はわかっていた。
娘が気丈に振舞っていたのも、 相当無理をしていたことを。
妻は、親の温かさに涙が止むことはなかった。
親が背中を押してくれた。

「真実を掴みなさい」と。
費用面でも全て親が負担すると言ってくれた。

会社から駅に向かう夫を尾行する3名の追跡班と、先に夫が宿泊するホテルへチェックインしてフロントで待ち伏せする、
カップルを装った2名待機班。
総勢5名の探偵が妻と子供のために調査に挑む。

※ 本文は依頼人の了承を得てプライバシーに配慮しています。

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