1カ月ほど前、5歳になる女の子を連れた女性が相談に来た。
この女性は、4年前に 夫の酒乱が原因で離婚し、 茨城の実家で両親と暮らしながら会社勤めをしている29歳。
一見、地味な感じで特別目を引くようなことはないが、人のよさがにじみ出ているような優しい風貌の持ち主。
その女性は、「話しにくいことなのですが・・・」と言ったきり、黙ってしまった。
こういうときは、無理に話を引き出そうとはしてはいけない。
もしかしたら、小さな娘の前で話しにくいのだろうかと機転をきかせた女性スタッフが、「遊ぼうね」と娘を別の部屋に連れて行った。
するとようやく重い口を開いてくれた。
【交際相手に妊娠したと告げた翌日、携帯電話が解約されていて連絡がとれなくなってしまった。
おなかの子供も一人で中絶した。お金も貸している。連絡は一度もない】と、予想し得なかった話が飛び出てきた。
女性によると、離婚後、寂しさに気持ちを支配されていたときに、たまたま出会い系サイトで知り合った彼(自称36歳)と
2年間交際していたとい う。
その彼との交際は話題も豊富で、とにかく愉快で、過去のもがき苦しんだ結婚生活を払拭(ふっしょく) させてくれるほど
楽しかったと振り返る。
そんな彼と深い関係になるのに時間は必要なかった。
しかし会うのは平日だけで、そのほとんどがラブホテル。
依頼人は、体の関係だけなのかと思い悩んだ末に、週末に会えない理由を聞いた。
彼は、「週末は、一人暮らしをしている病弱な母親の面倒をみなくてはいけないから会えないんだ。ごめんね」と話してくれた。
その言葉を信じ交際を続けた。
そして3カ月が過ぎた頃、「いつかは結婚したいね!」という彼の言葉は、女性にとってなにものにもかえがたいほどの喜びをもたらした。
結局、彼のいいなりになり、体だけでなくお金を貸すことにも何のためらいもなく、既に70万円を貸してしまったと肩を落とした。
女性が知っていることは、彼が話してくれたという母親のことと、有名な機器メーカーに勤務していて、
宇都宮市内の独身寮に住んでいるということだけ。
しつこく聞いても嫌われてしまうかもしれないという思いが強かったと、自分の浅はかさを責めた。
中絶という重い十字架を背負わされて、悔しさと怒りが心を占拠し、娘にもわけもなくつらくあたってしまう。
このままではいけない。
こんなだめな自分と決別したい・・・。男の所在調査と素性調査がはじまった。
次第に暴かれていく男の正体…そこには・・・。
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