「いやな夢を見た・・・」と県央 に住む、50代の妻。
小柄で、シ ョートカットが似合い、実年齢よりずいぶんと若く見える。
滑舌もよく、小気味いい話しぶりが印象的だ。
夫は、小さいながらも堅実な会社を経営している。10年前に先妻に先立たれた。
妻は、近くの小料理 店で働いていて、やはり6 年前に夫に先立たれていた。
同じ境遇もあってか、3年前に妻と再婚したのは自然の流れだったという。
夫は、真面目でやさしいだけが取り柄で、見た目にもけっして女性にもてるタイプではないと言い切る。
妻が見たいやな夢というのは、夫が見知らぬ女性と浮気しているというもの。
その伏線となったのが、ここ半年、 協会の会合というような理由で朝帰りが多くなったことだ。
今までは会合に出ても、1次会だけで必ず帰宅していたのに。しかし妻は、まったく疑いもないほどに断言する。
「主人に女性がいるはずがない」 と、あくまでも悪夢を打ち消すため、安心を得るために調査をしたいだけなのだと言う。
1ヵ月後の協会の忘年会 で、県北の温泉地に行く日を調査日とした。
午後1時、夫の車が出発し た。
笑顔で見送る妻。 車が見えなくなるまで妻の見送る姿が探偵からも確認できる。
宇都宮インター方面へ向かう。 このまま高速にのるかと思いきや、わずか自宅から1キロほどのコンビニに駐車した。
買い物するのでもなく、携帯電話を取り出す。 携帯電話を閉じたあとも車はそのまま 30分は駐車していた。
探偵の誰もが、ここで待ち合わせなのか・・・と思いをめぐらせていた。
しかし、夫は自宅方面に戻るかのように車を走らせた。
依頼人である妻は、いや応なく電話を掛けてきて、現状の報告を求める。
先ほど夫が車内で電話した相手は妻ではないこと、自宅方面へ引き返したという現実に神経を尖らせ、憤慨している。
電話口の妻の興奮した口調に調査責任者も、へきえきする。
すると、夫の車は、自宅までわずか300メートル手前の道路沿いの2階建てアパートの裏手の駐車場に車を乗り入れ た。
その時まさかの出来事 が!!
自宅方面からこちらに 向かって歩いてくる妻の姿を発見した。
険しい形相で闊歩 (かっぽ)している。
ここで、 夫に詰め寄る気なのだろう か?
すかさず説得したが妻 は聞く耳をもたない。それでも説得してなんとか自宅へ送り届けた。
しかし、ほっとしたのもつかの間、夫があたりに注意を配りながら車を降りた。
すると、背中を屈め2階へ向かう階段に足をのせた。
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