約束の3カ月が過ぎ…ついに半年が過ぎた。一度も連絡がない。
夫は、ようやくこの現実を受け入れ、妻の所在を割り出すこととした。
捜索開始から2週間、妻のアパートを発見。

それは、群馬県境の木造2階建ての今にも朽ち果てそうな古いアパート。
耕作されていない畑や雑木林に囲まれ、様子をうかがうことができない場所だった。
妻は、ここから車で15分ほどの工場で働いていた。

探偵は、草むらに身を隠し、様子をうかがう。
ほどなく、何台かの車が来た。中東アラブ系の男性が4人、3人と部屋のいくつかへ分散して入る。
妻以外の居住者はすべて外国人の男だけだった。
そのうちの一人が2階へ駆けあがり妻の部屋をノックした。
妻がドアを開けた。電灯が消えても男は妻の部屋を出ることはなかった。

翌朝6時から再び張り込む。
6時半になろうとした矢先、男だけが部屋から出て、1階の部屋へと入った。
そして7時半、作業着に身を包んだ妻が出てきた。

平日は、すべてこのパターンだった。
夫に報告。
感情をあらわにすることはなかったが、「連れ戻したい」とつぶやいた。目が濡れていた。

不審かつ得体の知れない外国人だけが屯(たむろ)するアパートであり、危険も予知しなくてはならない。
万が一に備え警備業として所轄の警察署に計画を報告しておく。
夫には防刃ベスト(刃物を通さない)を着せて、早朝の6時半、男がドアを開ける瞬間に踏み込んだ。

「ドゥォントムーブ スティヒァ」(そこを動くな!)。
男を部屋に押し戻し座らせる。
妻は呆然自失(ぼうぜんじしつ)としたままベッドの中にいる。

妻は夫に任せて、妻のものと思われる荷物を運び出す。男の仲間が騒ぎを起こさないうちに事を運ぶ必要がある。
片言の英語で男を追及していく。男は24歳、妻のことは29歳で独身と聞いていたという。
男に、家族でほほ笑ましく写っているスナップを見せる。信じられないと頭をかかえた。
泣きじゃくる妻を護送用のワゴン車の後部座席に押し込んで、この場を後にした。

それから3日後、また妻がいなくなった。
現在は、正式に離婚して別々の道を歩んでいる。
「手遅れにならないうちに、勇気をもって現実を直視すること。これが大切なのです」と駒木代表取締役。

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