8月も終わりを迎える頃、50代の母親と20代後半の娘が相談に。相談内容は、今年大学を卒業し就職した次女が失踪したこと。次女は県内の進学校を卒業して、都内の名門私立女子大学に入学。母親は金融機関に女性管理職として勤務し、長女は新幹線で都内の商社に通勤している。次女は県内に事業所がある製薬会社に総合職として就職し実家から通勤。背景をひも解いていく。これまでに失踪の経験は? との問いに、実は大学時に…と母親が重い口を開いた。大学生時代にアルバイトをしていた時、離婚歴のある15歳年上の男性と恋に落ち、約2カ月連絡が途絶えた後、突如その男性と結婚したいと自宅に連れて来たことがあるという。その後、次女には内緒で男性を説得し別れてもらったと。
それからは、自宅から通学させ監視の目を怠らなかった。10年前に次女を溺愛していた父親が事故で亡くなったショックに起因して、父性を求め後先を考えずに流されてしまうような傾向が強いと母親は言う。また、次女は浪費癖があり、浪費をすることで現実逃避をしているようで、祖父母からも多額の借金をしていたこともある。このような紆余(うよ)曲折はあったものの、無事就職し、家族3人での平穏な生活が続いていた。3人の約束事は、週に3回は家族そろって食事をとることと、帰りが遅くなる時は必ず連絡をすること。6月までは、この約束が破られたことはなく、会社の出来事もいつも笑顔で話してくれていたという。
7月に入ったあたりから、いろんな理由をつけて帰宅時間が遅くなっていった。8月のお盆休みに入る日を境に、ラインはブロック、携帯も着信拒否にされ帰宅しなくなった。9日間の盆休み明けに母が会社に連絡をすると、体調がよくないので休みますと連絡があったという。世間体もあり、警察には家出人届も出していない。手掛かりは極めて少ない。部屋を探索するが、何も持って行っていない。分かるのは使用している車だけ。
難しい調査になった。次女が母親と長女に話していた内容を精査して何か引っかかるものがないか検証していくことと、インスタやラインの分析しかない。すると、インスタに「彼氏ができたよ!」ということが載せられていた。この失踪の背景には間違いなく男性の影があると踏んで失踪の背景を洗い出していく。母親と長女に会話の中で出て来る男性はいなかったか、回顧してもらう。すると、一度体調が悪くなり会社の男性が自宅まで送り届けてくれたことがあり、食事をするたびにその人の話が出てきていたという。思い返せば、娘が話す様子は確かに好意を抱いていたようだったと感じていたと…。