素人探偵の被害が後を絶たない。看板やホームページはそれらしく装飾をしているものの、実態はまるで「探偵ごっこ」そのもの。そんな「素人探偵」に言われるがまま契約し、100万円近い金額を支払ったうえに届いたのが、言葉にならないほどお粗末な報告書。写真に日付も時間もない。不当に高い金額を取り、ただ車に違法性の高いGPSを取り付けて100円パーキングやショッピングモールに駐車している車の写真があるだけ。不要な写真を数多く印刷し報告書に厚みを持たせているが、DVDもなく一連の行動が記録されたものもない。とても証拠として立証できるものではない。
そんな素人探偵に頼んでしまった40代の妻が兄を伴って相談に来た。妻もその兄もこんな探偵は許せないと憤りを隠せない。ほとんどの依頼人は探偵という仕事を分からない。本物の探偵は、インフォームドコンセント(説明と同意)の重要性を認識して、現場に伴うリスクを十二分に説明することが必須のこと。妻は数年前から夫の浮気に悩んでいた。調査に踏み切れなかったのは、当時は息子が学生であること、夫は浮気をしているがきちんと生活費を入れてくれていたため。一人息子の就職が決まるまでと心に決めて、良き妻を演じてきた。息子の就職も決まった。これからは自分の人生を歩みたい。そのために浮気の証拠をつかんで、慰謝料・財産分与等有利に離婚を進めたいと決断した。
夫は自動車関係の部品を製造する会社に勤務。会社の女性と浮気しているであろうことは、夫と同じ会社に勤務している妻の中学の同級生からの情報や夫が使用していた携帯からほぼ特定できた。相手の女性も既婚者で驚くことにその夫は、同じ会社の他県の事業所に単身赴任中である。調査にあたり大切なのは夫の行動の分析。いつ女性と会うかその日時を想定すること。妻の仕事は個人医院の受付・医療事務で、休日は水曜・土曜日の午後と日祝日。夫は管理職でほぼ午後7時には帰宅している。休みの日も出かけることはない。つまり、夫は妻に隠れて有給休暇をとって女性と密会するというパターンにたどり着く。調査日を決めるうえで、妻の同級生に協力を仰ぐことに。同級生と親しい女性が労務課にいて社員の労働時間や休暇取得の管理をしている。夫とその女性の有給予定が重なる日がないか情報をもらい調査日を決定することに。ある金曜日に着目した。夫は「午後休」で女性は「休暇」という日。プロの探偵としてのプライドに懸けて調査開始。夫が退社する昼前から夫の車を張り込む。12時10分、夫が車に乗り込み尾行開始。すると予想に反して車で10分の高速道路のインターから南へ向かった…。
後半に続く