8月某日、40代の女性が相談に来た。実はこの女性、8年前に弁護士の紹介で夫の浮気調査をしたリピーター。その時は、夫が半年間関係を持っていた既婚の30代の女性との証拠をつかんだ。当時は下の子どもが高校入学したばかりで離婚には踏み切れず、妻がその浮気相手と会いたいとの強い意志から、弊社がボディーガードとして立ち合い、女性が謝罪して身を引いたことから大事にはせずに決着した。 もちろんこのことは夫には極秘裏に進め、話 し合ったことは知らない。妻は子どものため、生活のために平静を装い生活を続けて来た。
いざという時のために、少しでも経済的に自立をしないといけないとの弁護士のアドバイスもあり、フルタイムの仕事を続けて来た。今では子供たちも独立し、夫との彩りのない生活を続けているにすぎない。夫は休日でも、ゴルフにお酒にと、自由を謳(おう)歌。 時折、寂寞(せきばく) とした思いに駆られてしまうと話した。
そんな生活が続いている時、妻の親友が隣県に あるアウトレットモー ルで、夫が同年代の女性といるところを目にしたという。その話を 聴いてもなぜか不思議と怒りは湧いてこなかった。むしろ、今度こそ不貞の証拠をつかんで、少しでも有利な条件で離婚し、これから自分の人生を生きていきたい、と考えていた。夫は5年前に工具メーカーを退職して、現在はそのメーカーの代理店を営んでいる。夫のほかに男性社員1人と女性スタッフ2人がいる。
妻は調査方針の打ち合わせの中で、有益な情報として、社員全員の集合写真を見せた。そこに写る一人の女性スタッフが怪しいと言い切る。
調査開始。夫はほぼ1日おきにその疑わしき女性スタッフと外出するが、営業先の顧客を回るだけで、特に怪しい行動はない。一度しゃれたレストランでランチをとるが、それ以上の怪しい行動はなく、その女性も退社後はきちんと家庭に帰っている。
調査する探偵も「不倫しているという空気はまとっていない・・・」と感じると報告した。依頼人の情報を遮断して、夫の尾行に専念する。すると、調査5日目のこと。自宅を出た夫は会社に立ち寄ったが、すぐに出て来た。15分ほど車を走らせ、行き着いた先は、ある住宅街の奥にひっそりとたたずむ築30年は経とうかと思しき2階建てのアパートだった。鍵を開 け部屋に入る。すると、普段着に着替えて出きた。車で向かった先はホームセンター。家庭用雑貨や飲料類をケース買いして再びアパートへ。そのまま張り込みを続けること7 時間。午後5時半をまわった時、アパートの駐車場に1台の車が止まった。同年代の女性が、スーパーのレジ袋を片手に夫のいる部屋に消えた・・・。