7月某日、県内の弁護士が、妹だと言う50代後半の女性を伴って来た。その弁護士とGKとは以前から 多くの事案について、連携して仕事をしている間柄。妹の娘、つまり姪の婚約者についての相談だった。
娘は30代前半。5歳年下の妹は、既に結婚して子供もいる。娘は身内が心配するほどの大の父親っ子で、友達よりも誰よりも父親が優先だった。父親は、それはそれでうれしかったが、娘の将来のためにいくつか縁談を持ってきた。父親は某一流企業の部長職にあり、高卒の学歴では絶対に到達できないといわれていたポストについた人物で、次の株主総会では執行役員に 任用されるはずだった。その父親が仕事中に倒れて突然他界した。くも膜下出血だった。8年前のことである。娘の気落ちの度合いは半端なものではなく、拒食症になり肉体的にも精神的にも体調を崩し、総合職として勤務していた金融機関を退職するまでに至った。それから1年、家族のサポートや医療機関などの支援機関の助けもあり、立ち直り、30歳を前に看護学校に入学。
もともと偏差値が高く、成績も良かったが、そこでクラスメー トに誘われ、クラブに通うようになった。娘にとっては別世界だけに、嫌なこと辛いことを忘れされてくれる時間なのだろうと母親はとりたてて注意もせずに娘の自由にさせておいた。看護学校3年になった時、クラブで知り合い、交際をはじめた男性と結婚したいと家に連れて来ることになった。母親は正直驚きと不安で茫然自失となり、弁護士である兄も同席させることにした。娘が連れて来た彼氏は、超のつくほどのイケメン。挨拶から何から何までそつがない。 娘は鼻高々だったが、 あまりにも出来すぎていると母親だけでなく兄も不信感を抱いた。
正直、娘はお世辞にも、きれいといえるタイプではなく、以前の拒食症の反動もあって、20キロ以上体重が増えてしまい、現在は70キロを超えているような見た目。なのに、どうしてと疑念を抱かずにはいられなかった という。
その彼氏は、先輩とともに経営していたWEB関係の子会社として独立したばかりだと名刺を差し出してきた。近々一緒に住み始めるといい、看護師には絶対になるから認めてほしいと懇願された。娘の生き生きとした様子をみていると、頭ごなしには反対もできない。万が一、反対をして、父親を亡くした時のようになってしまったらと思うと、まるで腫れ物にさわるようだったと母親は不安そうに語る。 そして、弁護士でもある兄の勧めもあり、その彼氏の打算と偽りが隠されていた・・・。
後編に続く