63歳の妻が相談に来た。
 夫は県東にある社員80人の精密機械メーカーの2代目社長。妻は三十数年前、まだ社員10人ほどしかいなかった先代の舅(しゅうと)が社長をしているときに嫁いだ。舅・姑(しゅうとめ)との同居に加えて、子供を背負いながら製作所の仕事もこなしてきた。地元でも信頼のある中堅企業として成長し、収入も格段に増えた。質素・倹約が信条だった舅が他界し夫が後を継いだ。その頃から何かが変わった。家を改築し別宅も新築、高級外車3台を保有するようになった。会合だと言って家にいる時間もない。何度か浮気している痕跡に気づいたが、子供たちと経済的には何不自由ない生活が送れるからと見て見ぬふりをしてきた。
 しかし、状況は一変する。3年前、姑が認知症を患い施設へ入所させたが、すべて妻任せで、夫は一度として施設へ顔を出したことはない。たまりかねてそのことを口にすると、信じられない言葉を浴びせてきた。「誰のおかげでいい暮らしができるんだ!ボケてる親に顔見せる必要があるか!おまえが責任もって面倒見ろ!」。妻はこの言葉に凍りつく。そこには、若かりし日の夫の優しさはみじんもなく、ただの傲慢(ごうまん)な男成り下がってしまったと。たとえ浮気していたとしても、家庭を第一に考え生活ができればと思っていたが、この先、もし自分も姑のようになってしまったらと思うとやり切れない。浮気の証拠をつかんで、財産分与・慰謝料を元手に残りの人生をやり直したいと。
 調査日の選定に入る。会社に掲示されている、某経営者の団体への出席という日が怪しい。新型コロナの影響でその会合は中止であるのに、夫はそれを隠しての出張だからだ。8時30分、夫がイタリア製のスポーツカーに乗り込む。そして高速道路に入り北へ向かう。一気にスビートをあげる。追跡車両はあっという間に引き離されるが、夫はスビート狂であると事前に情報を得ていたことから、1800ccのバイクを調達しておいたため見失うことはない。そして、F県のあるインターで降りコンビニへ。追跡車両も追いつきカメラを向けていると、夫の車の隣へ軽自動車が止まる。コンビニから出てきた夫が近づき女性が降りてきた。夫と同年代の女性であることが見て取れる。女性は夫の車に乗り込みラブホテルへ入り、約8時間を過ごしコンビニへ戻る。夫と別れた女性の車を追う。すると築20年程の一軒家に入った。
 後日の素性調査で、その女性は夫の中学のクラスメートであり、配偶者は3年前他界していたことが判明。10日に1回のペースで同じ行動をとっていた。報告の時、妻にはまったく悲壮感はなかった。

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