依頼人は、30代後半の教員。不倫相手からストーカー行為を受けているという。実はこれが2度目の依頼だった。2年前に夫の浮気調査をしたことがある。結果は黒で、勤務先の女性と関係を持っていた事実に直面した。しかし、当時を振り返り、不思議と怒りが湧いてこなかったという。夫婦関係は冷え切っていたが、子供にとっては良き父親であり、お酒も飲まない。家庭さえ大事にしてくれるのであれば、事を荒立てるつもりはないと、当時の浮気調査の報告書は一種の保険のような形で保管してあると妻は平然としていた。ただ一方で、何か言いようもない虚しさが次第に心を支配していくような感覚に陥ったと妻は語る。

 夫も浮気していたし家庭さえ壊さなければと、虚しさを埋めるための葛藤が続く。出会い系サイトもやってみたが、怖くて一歩踏み出せない。そんなある日、職場の机を整理していると、独身の時に使用していた古い携帯が出てきた。充電して残っていたメールを開いてみた。当時3年程交際していた元彼のメール。両親が彼の生い立ちが気に入らず、猛反対にあって結婚できなかった。彼の優しさや楽しかった思い出が鮮明に浮かんでくる。どうしているかな? 懐かしさから思わずメールしてしまった。

 2人の間にこの10年の空白などなかったかのように、メールの返事はすぐ返ってきた。なんのちゅうちょもなく再会。その彼はずっと独身だった。ただ、妻には妙な違和感があった。あれほど再会に胸を躍らせていたのに、実際に会ってみてそういう湧きたつような感覚がない。会わなかったほう良かったという思いと、束の間の非日常を楽しめばいいという心の葛藤はあったが、夫も浮気していたという事実が後押ししてホテルに行った。結局、妻には虚しさと後悔が残っただけだった。妻はもう会わないと決めて距離を置いた。  しかし、元彼はそうはいかなかった。住所は教えていないはずなのに、自宅から見えるコンビニの駐車場で何度も彼の車を目撃した。そういえば違和感があった。ホテルを出た後にバックの中の免許証入れがさかさまだったような。シャワーを浴びている時に見られたのかもしれない。卑猥なメールが送られてくる。妻は、次第に恐怖にかられていった。もし、夫や職場にバレたらと思うと何もできない。怖く踏み出せない。そんな時、子供とショッピングモールに行き、偶然を装って突然声をかけられた。尾行されているに違いないと確信を得た。万が一、子供に何かされたらと思うとこのままにはしておけない。妻の身辺警護とストーカー行為の証拠を押さえるために調査開始。次第に、元彼の変質的行動が明らかになっていく…。

後半に続く

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