昨年10月のこと。10年前に娘のことで調査をしたことのある70歳を過ぎた女性が再び相談に訪れた。今回は、もうすぐ50歳を迎える長男の相談だった。25年ほど前、息子に結婚したいと告げられたが反対してしまった女性がいたという。その女性は交通事故の後遺障害がある母親と2人暮らしであったことや家が県外で遠く、結婚を許す気にはなれなかった。女性の家庭環境を知るまでは、たまに家に遊びに来た時も、温かく迎え入れていた。しかし、彼女の家庭環境を耳にしてから冷遇するようになってしまい、その女性が身を引いたのだろうと。息子はその後、交際した女性がいたが長続きせずに、現在も独身でいるという。

その息子が、肺がんを患ってしまった。手術は成功したが、息子から懇願されたことがあると相談に来た。その彼女が元気でいるのか、幸せになっているのかどうしても知りたい。そして、許されるなら一度会いたいというものだった。入院している時、彼女との思い出がよみがえり、気になって仕方がないと打ち明けられたという。ぜひ捜してもらえないかと。その話をする母親は、嗚咽していて言葉にならなかった。自宅を訪問して息子に会った。話を聴く。見せられたのは、当時二人で海に行った時の白黒写真。かわいらしい女性が笑顔で写っていた。ひびだらけの写真は、息子の時空を超えた思いの表れだった。彼女に渡してほしいと手紙が用意されていた。

断片的な記憶の一つ一つをパズルのように埋め込んでいく。手掛かりは多くない。しかし、何としても彼女にこの手紙を渡さなくてはならない。調査開始1カ月。女性の居場所が判明した。一度結婚したが離婚しての20歳になる娘と東北に住み、介護士として老人ホームで働いていた。GKの女性スタッフが接触して事情を打ち明け、大切にしていた写真のコピーと手紙を渡した。戸惑いと驚きを隠せなかったが、最後は笑顔で手紙を受け取ってくれた。1週間後、GKに手紙が届いた。そこには、おばさんになったし、当時のままの私を記憶に留めてほしいから、会わないほうがいいと書かれていた。ただ、よければ電話してくれるように伝えてくださいと。

今年になり母親から感謝の思いが詰まった手紙が届いた。この数カ月彼女と話せた息子は楽しそうだったと。私も彼女に謝罪できて気持ちが晴れたとも書かれていた。ただ、息子はがんが転移し入院、覚悟が必要ですと書かれていた。誰しも、20歳前後の大人の階段を登り始めた時代の交際相手は鮮明な印象を持っている。高齢者の初恋の人探しは例外なく20歳前後に交際していた相手である。人は、心や体が弱ったり、余命を考えた時、最も印象深い思い出を回顧するものかもしれない。

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